最近、カメラ修理の作業の中で、CADを使って貼り革を製作する機会が増えてきました。
クラシックカメラの外装に使われている貼り革は、経年劣化によって縮んだり、硬化したり、端が浮いたり、場合によってはボロボロに崩れてしまうことがあります。特に戦前から昭和中期頃の国産カメラでは、革を0.2mm厚ほどのゴムで作っているため、元の革がすでに再使用できない状態になっていることも珍しくありません。
従来であれば、現物合わせで革を切り出し、少しずつ調整しながら貼っていく作業が中心でした。もちろん、この方法には柔軟性があります。実機ごとのわずかな個体差や、過去の修理歴による変形にも対応しやすく、手作業ならではの強みがあります。
一方で、複雑な形状の貼り革を毎回手で切り出すのは、意外と時間のかかる作業です。
特に、レバーやネジ、セルフタイマー、巻き戻しボタンの周囲など、細かな逃げが必要な部分は、少しのズレで仕上がりの印象が大きく変わります。外装は機能に直接関係しないように見えて、実際には修理後の満足度を左右する大切な部分です。

そこで最近は、CADで貼り革のデータを作り、機械で切り出す方法を取り入れています。
まず、元の貼り革が残っている場合はそれを参考にし、必要に応じて実機から寸法を拾います。スキャナーで取り込んだ形状や、実測した寸法をもとにCAD上で線を起こし、穴位置や曲線、逃げの部分を整えていきます。単純な長方形に見える部品でも、実際には角の丸みやわずかな傾き、貼り込み時の余裕などを考える必要があります。
データ化しておく利点は、一度形状を整えてしまえば、同じ機種で再利用できることです。もちろんクラシックカメラには個体差がありますので、完全にそのまま使えるとは限りません。それでも、毎回ゼロから切り出すよりは安定した仕上がりになりやすく、必要に応じて微調整することで、より短時間で精度の高い作業ができます。
また、機械を使うことで、手作業では難しい細かな曲線や小さな穴も比較的きれいに仕上げることができます。特に薄い本革や合皮、紙系の素材などでは、刃の圧力や速度を調整することで、素材に合った切り方が可能です。逆に、素材によっては伸びたり、刃に引っ張られたり、裏紙との相性が悪かったりするため、必ずしも機械任せで完璧になるわけではありません。このあたりは、従来の手作業と同じく、経験による調整が必要です。

クラシックカメラの修理というと、ポンチや革包丁といった工具や旧来の技術を思い浮かべる方も多いかもしれません。もちろん、分解や調整の基本は今も変わりません。しかし一方で、失われた部品や外装材を補うためには、現代の道具を使うことも有効です。CADや機械は、クラシックカメラを現代に残していくための、ひとつの補助技術だと考えています。

元の雰囲気をできるだけ損なわず、かつ実用品として気持ちよく使える状態にする。そのために、手作業とデジタル工具の両方を使い分けながら、少しずつ作業方法を更新しています。貼り革ひとつを取っても、見た目の印象、手触り、耐久性、作業性など、考えることは意外と多いものです。
クラシックカメラを修理する仕事は、単に製造時の状態を再現するだけではありません。現代にある材料や道具を使いながら、そのカメラがもう一度使われるための状態を整えることでもあります。機械で切り出した貼り革も、そのための小さな工夫のひとつです。