中古市場では「完動品」と「ジャンク品」が明確に区別されているように見えます。
しかし修理をしている立場からすると、その境界は驚くほど曖昧です。
昨日まで問題なく動いていたカメラが、今日になって突然シャッター不良を起こすこともあります。逆に、ジャンク品として入手したカメラが、簡単な整備だけで正常動作を取り戻すこともあります。
特に製造から数十年が経過した機械では、
「今動いている」
ことと、
「今後も安心して使える」
ことは必ずしも同じではありません。
不具合はある日突然現れる
古い機械の多くは、限界まで状態が悪化してから症状が表面化します。
潤滑油の劣化。
部品の摩耗。
バネの疲労。
接点の酸化。
コンデンサーの容量抜け
これらは長い年月をかけて少しずつ進行します。
そしてある日、
最後の一押しで症状として現れます。
その瞬間に初めて「故障した」と認識されるだけで、実際には何年も前から劣化は進んでいたのです。
「動く」は品質保証ではない
私は点検や整備を行う際、
「動くかどうか」
だけではなく、
「どのくらい余裕を持って動いているか」
を見ています。
ギリギリ成立している状態なのか。
十分な余裕を持っているのか。
同じ完動品でも、その差は大きいからです。
ヴィンテージ品は状態を維持するもの
クラシックカメラは、買った瞬間がゴールではありません。
むしろそこからがスタートです。人の付き合いと同じです。
完動品とジャンク品の差は絶対的なものではなく、時間とともに移り変わる状態に過ぎません。
だからこそ、長く使いたいのであれば、故障してからではなく故障する前の整備が重要になるのです。