中古カメラの世界には、いわゆる「定番機種」があります。
人気があり、多くの記事が書かれ、多くの人に勧められ、中古市場でも高値で取引されるカメラたちです。
それ自体を否定しようとしているわけではありません。
評価されるだけの理由がある機種も多く存在します。
しかし、私は時々違和感を覚えることがあります。
それは、有名な機種ばかりに注目が集まり、それ以外の多くの機種が忘れ去られていることです。
情報が人気を生み、人気が情報を生むループが存在する。
現在の中古カメラ市場では、情報が豊富な機種ほど注目されやすい傾向があります。
レビューがある。
修理情報がある。
作例がある。
SNSでも話題になる。
すると購入希望者が集まります。
需要が増えます。中古カメラは新品で生産されていないわけですから、需要と供給のバランスが変化してきますね。
価格が上がります。
さらに記事や動画が増えます。
そしてますます人気になります。
一方で、情報が少ない機種は逆の道を辿ります。
情報が少ない。
選択肢に入らない。
需要が伸びない。
価格が下がる。
整備されず放置される。
故障個体ばかりが流通し、世間に残るものはジャンク品ばかりになっていきます。
評判が悪くなる。
さらに人が離れる。
こうした循環は決して珍しくありません。
不人気機種は本当に劣っているのか
ここで考えたいのは、
人気がないことと、出来が悪いことは同じなのか
ということです。
私は修理をしていて、そうは思いません。
もちろん市場で高く評価される機種には理由があります。
しかし、だからといってその他の機種が全て劣っているわけではありません。
実際には、
設計思想が異なるだけだったり、
時代背景の違いだったり、
単に知名度が低いだけだったりします。
「定番」だけでは見えない世界
例えば、Nikon FM2 は確かに使いやすいカメラです。
私もそれを否定するつもりはありません。
しかし、
「最初の一台はNikon FM2」
という言説ばかりが繰り返される結果、市場価格は上昇を続けています。
その一方で、
PENTAX ME や、PENTAX SP のような機種は、十分実用的でありながら語られる機会が少なくなっています。
修理をしていると、
なぜこちらは語られないのだろう
と思うことが少なくありません。
私が中級機を積極的に扱う理由
私は修理屋として、こうした中級機や不人気機種にも正面から向き合いたいと思っています。
それは単に「判官贔屓」ではありません。
その時代にはその時代なりの役割があり、
設計者の工夫があり、ユーザーがいたからです。
市場の評価だけで機械の価値が決まるのであれば、多くの興味深い製品が歴史の中に埋もれてしまいます。
それは少し惜しいことだと思うのです。
選択肢を狭めているのは誰か
現在のカメラ趣味は、以前よりも情報が得やすくなりました。
しかしその反面、
「おすすめ機種」
「初心者向け機種」
「買うべき機種」
ばかりが繰り返し紹介されることで、選択肢が狭くなっているようにも感じます。
本来であれば、
なぜこの機種は人気なのか。
なぜこの機種は忘れられたのか。
何が評価され、何が評価されなかったのか。
そうした視点で見てみると、カメラ趣味はもっと面白くなるはずです。
名機を否定したいのではない
私は有名機種を否定したいわけではありません。
名機と呼ばれる機種には、それだけの魅力があります。
しかし同時に、名機の陰で語られない機種にも目を向けてほしいと思っています。
市場価格や知名度だけでは見えてこない価値があるからです。
そして、その多様性こそが本来の中古カメラ趣味の面白さではないでしょうか。